今回は「サービスハブ」利用者のはるとさん(仮名)のお話をお聞きします。職員の小林も同席しています。
ーーー今どんな仕事をされているんですか?
はるとさん
今はA型作業所に通っています。アパレル関係なんですけど、仕分けとか男女の服に分けたり。あとは値段をつけて発送するまでの作業をしてます。今年2023年の1月6日からです。
ーーーそもそもどんな経緯で、サービスハブを利用されたんですか?
小林
はるとさん、解説していい?
はるとさん
はい、お願いします。
小林
僕とはるとさんが出会うまでの大まかなストーリーとしては、岡山で暮らしていた中でいろいろあって、岡山を離れることになって大阪にたどり着き、大阪で働きはじめたものの続かなくて、最終的にお金がなくなって、生活保護にいたった経緯があります。 生活保護の申請中にうちのサービスハブ西成につながりました。
その頃は今より表情も硬かったし、精神的にしんどそうで、本人の希望もあり、精神科に一緒に通って、ボランティアにも参加して、アルバイトもやりながら、最終的に今のA型作業所につながったという形ですね。
はるとさん
はい、そんな流れでした。西成区役所のケースワーカーさんから2022年の5月に紹介されました。
小林
西成に来たばかりで新しい生活がスタートして不安な気持ちも大きかっただろうと思いますし、生活保護の申請中なので、お金は基本的に持ってない状態なんで、決定するまで食べるものもたいへんだったと思います。僕らの差し入れも種類が限られているので。
ーーーたいへんだったんですね。今はおいくつですか?
はるとさん
27歳で、今年28歳になります。
ーーー岡山にはいつまでいらっしゃったんですか?
はるとさん
26歳までいました。その頃まで農家をしていました。
ーーー農業は高校を卒業してからですか?
はるとさん
いえ、元々13歳のときに母親の実家のある岡山に京都から引っ越してきて、高校には行かずに農家さんのところで2年間アルバイトをしていました。その後、独立して16歳から26歳までトマト農家をしていたんですが、経営もあんまりうまくいかなくなったりして、精神的にしんどくなって、廃業という形で辞めたんです。そのあと農協のアルバイトも数ヶ月で辞めて、そこからひきこもり状態になって。
ーーーその状態で岡山から、なぜ大阪に来ることになったんですか? さしつかえなければ教えてください。
はるとさん
ひきこもり状態になって仕事をする気力もなく過ごしていて、だんだん家族との関係がうまくいかなくなっていると感じました。僕が20歳の頃に母が再婚して再婚相手の家に僕も住んでいました。
2022年の7月の終わりぐらいに、なんかそろそろどうにかしてほしいみたいな感じだったと思うんですけど、母親から「あんまり岡山の家に居続けるのも良くないよ」という会話があって別のまちに行こうと決心しました。それで、1番に浮かんだのが西成だったんです。
それで大阪に来たものの、某フードデリバリーサービスがうまくいかなくなって、このままじゃ本当にやばいと思って、近くの不動産屋でいろいろ話ししたら生活保護の申請ができると聞いて、申請して、ケースワーカーさんに案内されてここに来たという流れです。
ーーー岡山から大阪に来られた際はどちらで暮らしていたんですか?
はるとさん
最初は大阪・新世界にあるネットカフェに半月ほど滞在していました。来てすぐに自転車を購入して某フードデリバリーサービスの仕事をしました。岡山に住んでいたころに配達パートナーに登録だけはしていたんです。
ーーーめちゃくちゃ今どきの仕事ですね。土地勘がないと難しかったんじゃないですか?
はるとさん
はい、たいへんだったのですぐにやめました。当時の気分としては面接に行くとか、決まった時間に働くのは多分しんどいなと思ったんです。某フードデリバリーサービスは登録さえしておけば自分のタイミングで働けるので。
ーーーなるほど。サービスハブを利用されるようになってからはどんなことをされましたか?
はるとさん
たくさんボランティアに参加しました。地域のこども祭りで駄菓子屋をしたのが印象に残っています。子どもたちと関わるのは楽しかったですね。岡山にいたときよりは気分がよくなって、今のA型作業所に通う前は週1回4時間ほど清掃のバイトを去年の年末までしていました。福祉アパートの掃除です。
ーーーサービスハブに来て良くなかったなと感じる瞬間はありましたか?
はるとさん
良くなったと思います。昼間ほぼ毎日ここに来てたんです。朝起きて夕方帰るというリズムができて、そういうのが楽しいと感じました。ほかの利用者さんたちと話したりとか、ゲームしたりしたのが良かったです。最近はトランプにはまっているんですけど。
小林
A型作業所を利用するには条件があって、障害者手帳が必要で、精神科の受診を半年続ける必要があります。今話していても、しっかりしているとしか思わないじゃないですか。
ーーーはい、めちゃくちゃしっかりされています。
小林
しっかりしているんですが、けっこう気持ちの面でしんどさを抱えてたりとか、いわゆる自身の特性で、環境によっては力が発揮できなかったりするんです。はるとさんはまだ若いので次につながるところに行ければと思っていました。A型とB型の作業所ではA型は最低賃金以上のお金が出る分、業務量も多く、いわゆる一般就労の仕事に近い作業なんです。普通の仕事なんだけど、サポートもついている、一定の理解があるところに行ければと考えていました。
ーーー勤務地はどちらなんですか?
はるとさん
西成区内です。
小林
仕事休みの日に来てくれたり、仕事終わりにも来てくれたりしてます。はるとさんがいなくてさみしがっている利用者さんは多いですよ。
はるとさん
みんながそんなふうに言っていたのを知らなかったので、それはうれしいですね。
小林
愛されキャラですよね。50代とかの人からしたら、甥っ子ぐらいの感覚なんじゃないでしょうか。
僕から見てはるとさんがすごいと思うのは、しんどい気持ちになりながらも立て直して仕事も決まって、今も落ち着いて仕事をしているって結構すごいなと思っていて、一度うつや精神的にしんどい経験をすると立て直すのに時間がかかるんですが、はるとさんの場合はそこがスムーズでした。
ーーーサービスハブのプログラムが良かったんじゃないですか?
小林
ありがたかったのは、この事業は昨年度までは生活保護を受給している人が対象やったんですけど、今年度から生活保護の申請中の人も対象になって、その第一号がはるとさんだったんですよ。だから自分たちとしては、すばやく出会えたのはうれしかったですね。
ーーーそういう状況の人にサービスハブのことをもっと伝えたいですね。サービスハブに来て、自分が変わったなと感じる瞬間はありましたか?
はるとさん
ありました。週1回グループグループワークで何人か集まってひとりひとりしゃべる時間があるんですが、元々人前で何かを発表するのは苦手でした。緊張して話せなくなるタイプなんですが、毎週取り組むうちに自然に話せるようになりました。例えば好きだった遊びとか、いろんな人が各自持ち寄ったテーマで話します。
グループワークで最初にいつも自分で今の状態を説明する時間があるので、一旦、自分の中で考える時間があるのが自分には役立ったと思います。
小林
チェックインの時間ですね。
はるとさん
今も参加しているんですが、「昨日よく眠れて朝もちゃんと起きれました。食欲は最近ないですが、基本的に体調はいいです」という感じで話しています。
ーーー自分を見つめ直す時間があるんですね。今の仕事が続くようになったら、やってみたいこととかはありますか?
はるとさん
いずれは福祉的就労ではなく、一般就労がしたいです。漠然とですが工場とかで働けたらと思います。
小林
いいですね。ちなみに僕らスタッフははるとさんにボランティア活動にいっぱい誘って参加してもらったんですけど、はるとさんの中ではどういう気持ちでいつも参加していたんですか?
はるとさん
自分の経験にしたいと考えていました。いろいろ試してみて、自分がどんなことが得意でどんなことが苦手なのか知りたかったです。例えばお祭りとかで子どもと関わるボランティアは楽しかったです。ほかには市営住宅で体操のボランティアに関わったときは周囲に気を配るのが苦手だと感じました。
ーーーそこまで客観視できていたら普通に働けそうですね。
小林
でしょうね。ただはるとさんがどこまで自覚してるかもわからないですけど、抑うつ状態に1回なっちゃうと、やっぱりそこから回復まで結構時間かかっちゃうんで、回復しきったら問題ないのかなと思います。
ーーーずっと大阪で暮らそうと考えていますか?
はるとさん
それはあんまり考えてないです。でも、今のところ西成は楽しい場所です。
小林
いま西成がいきなり生活する場になったわけじゃないですか。例えば、年末に三角公園でばったりお会いしたときのように、わりと町を歩いてても、利用者さんとたまにすれ違ったりしませんか?
はるとさん
たまにあります。
小林
それって僕らも含めてだけど、サービスハブが起点でいろんなつながりができて、自分の生活圏内に知っている顔が増えていったりすることがあると思っていて、それはどう感じますか?
はるとさん
知り合いが増えたと思います。仕事でもプライベートでもなくて、その中間の何かかなあ。最近サードプレイスという言葉を知ったんですけど、それかも。
小林
サードプレイスかもしれないですね。まさに。大人になってもそういう場所がある人ってほとんどいないと思っていて。こんな場所がもっとあったらいいのに。なんかふらっと来て、プライベートでもないから多少は気を遣って他の人を不快にせえへんようにという気持ちも働くけども、家に1人でいるよりは楽しいじゃないですか。
はるとさん
そう思います。
ーーー1時間たっぷり話していただきありがとうございました。