朝8時20分、外気温8度。
僕は喫茶店でモーニングを食べに、いつもより早く街へ来ていた。
街には、この時間から道端で一杯やりながら団欒するおじさん達の集まりがいくつかある。
ニコニコとして、みんな楽しそうだ。
昨年から大阪の釜ヶ崎という街で、就労支援の仕事を手伝わせてもらっている。
かつて日雇い労働の街だった釜ヶ崎は、いつしか生活保護・福祉の街へ。
生活保護受給者の多いこの街で、働くための支援が行われている。
なかなかディープなその支援現場の日常を、少しだけ覗かせてもらった。
(執筆:古市邦人)
-1- いっしょに働く未来のスタッフへ
この記事は未来の仲間を募集する、支援スタッフの求人記事として書いている。募集するのは「サービスハブ構築・運営事業(どーん!と西成)」という施設のスタッフ。この地域に住む、生活保護受給者の就労支援を行う拠点だ。
これまで僕は、さまざまな施設で約10年間若者の就労支援をしてきた。そしてサービスハブで半年ほど前から、週1日だけ働いている。そんな僕から見たここでの仕事を紹介したいと思っている。
サービスハブは、20代、30代中心の若いメンバーで運営している。よく笑い声が飛び交う職場だと思う。
想いを持って支援の仕事をしている人と話すと、利用者に対して、ルール上「やりたいけど、そこまではできない」ことへもどかしさを感じている人が多い。
ところがここサービスハブは、生活保護受給者を対象とする就労支援施設で、最後の砦のような場所。だから、なんでもする。スタッフに「やりたいのに出来ないことある?」と尋ねてみても「んー…ないかなぁ」と返事が返ってくる。
今、自分のいる組織で
「自分は支援者として、今後どうなっていきたいんだろうか?」
「今の場所で成長していけるイメージが持てない」
とモヤモヤしているあなたへ。
支援者として一回り成長するために、ここで働いてみるという選択肢はどうだろうか。
-2- 考えて、工夫して、なんとかする支援
改めて、ここは西成区の委託を受けて運営する、 サービスハブ(どーん!と西成)という就労支援施設だ。生活保護受給者の中でも働けそうな方に就労支援をする仕事。対象年齢は15歳〜64歳と幅広く、生活保護という最後のセーフティーネットに様々な経緯でたどり着いた人たちが来ている。
(施設についての詳細は、こちらの記事へ)
生活保護は、生活が立ち行かなくなった場合に一定の基準のもと支給される。
そこでは「稼働能力」という働ける力が判定され、働く力がある場合、生活保護を受けながらも就労することが義務づけられている。
ここでの就労支援が一筋縄でいかないのは、働けない理由が「依存症」「精神疾患」「DV」など、多岐にわたること。単に仕事探しを支援するだけではうまく進まない。だから働くための障壁となっていることを解消するために、出来ることは何でもする。
例えば、
・面談に来なければ家を訪問する
・医療が必要だと思えば、病院へ一緒に行く
・就労のために生活改善が必要であれば、家の掃除を手伝う
・保護を受けていても困窮するなら、お金を預かって支出管理をする
・心を開いてくれるまで時間がかかりそうなら、街を散歩しながら話をする
・小さな就労ステップが必要なら、低いハードルの仕事を作る
こんな感じで、ここにいるスタッフの試行錯誤はすごい。
そしてサービスハブを運営する法人がもともと野宿者の支援などに強い団体なので、何も持たずこの街へ流れ着いた方への初期対応も出来ることが多い。
例)
・身一つで困っている人への食費実費や交通費の補助
・次のステップに進むまでの間の緊急宿泊対応
・保存食、衣服などすぐに渡せる物資
・若者が低コストで暮らせるシェアハウス
(これらはサービスハブとは別チームと連携して実施)
など、緊急的な対応でもなんでもやってしまう。僕にとってこの手段の幅広さは、なかなか衝撃的だった。
おそらく支援職と呼ばれる人達が働いている職場の多くは、ここまで出来ないんじゃないだろうか。自分たちには対応出来ないケースは「リファー」といって他施設を紹介をしたり、支援を終了したりするのが一般的だと思う。
ところがサービスハブのような最後の砦となる施設は、「難しいので他でお願いします」と言える先が少ないため、頭を使い、工夫して、その人が一歩進むための支援をどんな方法でも考えていく。
ここでの支援をもう少し言い換えると、「医療・福祉・民間資源など、世の中にある全てのリソースを使って、なんとかできないか考える支援」かもしれない。
-3- 相談員、笠井さんの日常の風景
それでは、ここサービスハブの支援をひっぱっている笠井さんのスケジュールを覗いてみよう。明日のスケジュールを見させてもらうと、こんな感じだ。
9:00 Cさん居宅訪問
10:00 Aさん生活費の引き出し同行
11:00 荷物搬出
12:00 昼休み
13:00 Bさん中間的就労面談
14:00 事務作業しながら居場所にいる利用者とトランプや会話して過ごす
15:00 Cさん生活費の引き出し同行&面談
16:00 プログラム会議
17:00 事務作業
18:00 退所
ーーー明日の予定はどんな感じですか
「明日は面談が3件。保護費の入金日やから金銭管理系が多いかな」
「朝はAさんと一緒に保護費の引き出しにいって、うちで金銭管理。そのまま家賃を一緒に振り込んだり、光熱費を払ったり。」
「Bさんは中間的就労の職場で働いてるから、先方まで様子見に行って今後どうするかを話す面談やな。」
「Cさんも保護費引き出しの予定入れてるけど、昨日、一昨日と連絡とれてなくて、朝イチで家行ってみよかな。無事やったらいいんやけど。」
ーーー支援中の方の無事を確認しに行くようなこともあるんですね
「ほとんどの人が一人暮らしやから、倒れてても気づいてもらわれへんし。」
ーーー荷物搬入っていうのは?
「連携団体からボランティア作業をいろいろもらってて。掃除とか、ものの運搬とか、簡単な作業を手伝ったりしてんねん。明日は荷物運搬を利用者さんと一緒に手伝う感じかな。」
ーーープログラム会議はどんな内容ですか?
「サービスハブでやってる、相談支援以外のメニューをスタッフで話し合う会議。ボランティアのプログラムとか、講師を呼んでキャリア系のワークをやってもらったり。今どんな人がいて、どんなプログラムが必要かって話をしてる。」
さいごに、笠井さんに尋ねてみた。
ーーー笠井さん、ここでの仕事って何がゴールなんだと思いますか?
「私は、死ぬ時に『人生楽しかったな』と思えることがその人に1つでもあってほしいと思ってて。良い思い出があって、人生を終えて欲しい。そこへ向けて出来ることを一緒に見つけていくのがここでの仕事かな。就労することがそれに近づく人にはそこをゴールに支援するし、別の形の支援をすることもある。」
少しだけ、仕事内容をイメージしてもらえただろうか。
本当にさまざまな境遇でこの街にたどり着く人に、「人生楽しかったな」と思ってもらう。
ここは、そのように就労支援の仕事を解釈して働く人がいる職場だ。
そういう想いに共感できるような人が、ここで一緒に働いてくれたら嬉しい。
-4- さいごに。
ここまで読んでくださったあなたへ。
求人を少しでも気になってもらえていたら嬉しく思います。
今回のスタッフ募集に合わせて、さまざまな困難性を抱える方の就労支援について学ぶ勉強会を3/27に開催することにしました。
20代〜30代で、
「支援職としてもっと成長したい」
「今は別の仕事をしているけど、人を支える仕事に関心がある」
「いっしょに学べる仲間がほしい」
そんな方を対象とした勉強会。
自信が無くても大丈夫。サービスハブのスタッフも若手が多いので、一緒に学ばせていただくようなスタンスで開催します。
申込みは以下より、お願いします。
https://syuroushienkihon.peatix.com/
-5- 求人の詳細
今回の求人の詳細は以下ご覧ください。
ご応募、お待ちしております。
法人名 | 認定NPO法人釜ヶ崎支援機構 |
職種名 | ①就労相談員 ②中間的就労コーディネーター ③プロジェクトマネージャー |
雇用形態 | フルタイム(非常勤も週3日以上なら可) |
仕事内容 | ①相談、セミナー運営、通院同行、居宅訪問、ボランティア同行、支援記録入力、事務作業など ②有償ボランティア、中間的就労等の職場開拓、体験時のアテンドなど。(①の相談員業務と並行しての業務となります) ③施設の目標管理や、行政職員との連絡対応など(①の相談員業務と並行しての業務となります) |
採用予定人数 | 各1名 ※非常勤の場合は各2名 |
応募資格 | なし (社会福祉士、精神保健福祉士、就労支援経験 歓迎) |
勤務地 | 大阪府大阪市西成区太子1丁目13−15 |
勤務時間 | 9:00〜18:00 |
給与 | 時給1,170円 交通費実費(上限あり) |
休日・休暇 | 週休二日(日曜日+他の曜日で休みを調整可能) |
待遇・福利厚生 | 休日(8~9日/月)、年間休日数 110日、有給休暇(入社半年後付与) 社会保険完備 |
求める人物像 | ・仕事に対する責任感や熱意がある方 ・失敗してもチャレンジする姿勢のある方 |
選考プロセス | 1.履歴書・職務経歴書をエントリーフォームで提出もしくは、下記まで郵送してください。 〒557-0002 大阪府大阪市西成区太子1丁目13−15 2階 サービスハブ 採用担当者宛 2.選考通過者にのみ、7営業日以内にご連絡します 3.面接1〜2回(遠方の方はオンラインも可) 4.すべての方へ結果を連絡します |
エントリーフォーム | https://forms.gle/dgzF7icu27QwtwTt5 Googleへのログインが必要です。難しい場合は郵送で履歴書・職務経歴書をお送りください。 |
募集期間 | 第一次〆切:2023年3月31日(書類必着) |